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高専在学中にインターネットに魅せられてさくらインターネットを創業。上場時に「史上4番目に若い創業者」ともてはやされた2年後、債務超過に陥る。資金集めに奔走する中、経営者として最も大事にすべきものが見えてきた。

(写真=的野 弘路)

 このシリーズ連載に登場するのは11人目だと聞きました。私は1978年生まれで現在42歳。11人の中では最も若い経営者だそうです。人生経験こそ他の方より短いですが、10代で創業してから24年、実は経営者として多くの危機に直面してきました。

 パソコンOS(基本ソフト)の「ウィンドウズ95」が登場した翌年、私は舞鶴工業高等専門学校(京都府舞鶴市)在学中にさくらインターネットを創業しました。それ以来、いわゆる「サーバー」を貸し出すサービスを中心に手掛けています。東京や大阪、北海道にあるデータセンターにサーバーを設置し、それを企業や個人にインターネット経由で利用してもらうサービスです。今で言う「クラウド」のようなサービスを、時代に合わせて形態を変えながら提供してきました。

売上高は右肩上がりで伸びた
●さくらインターネットの売上高と社員数の推移

 さくらインターネットは本社を大阪市、支社を東京・新宿に置いているのですが、私は今、沖縄県に住んでいます。もともと小さな子どもを抱える社員などからの要望を受けてリモートワークを一部で導入していたのですが、新型コロナウイルスをきっかけに全社に拡大しました。

 「改革を推進するならトップから」。その信条の下、2020年4月に本格的に移住しました。以来、大阪や東京のオフィスに行ったのは3回だけ。取締役会ももちろんリモートです。会社全体の出社率も1割程度で落ち着いており、21年1月には東京支社のオフィスの半分ほどを解約する予定です。

 このコロナ禍で、経営難に陥っている企業も数多くあると聞きます。そんな話を聞くと、07年ごろの怒濤(どとう)の日々を思い出して心が苦しくなります。あのころの自分と同じような状況に直面しているのではないかと。

 05年10月、さくらインターネットは東証マザーズに上場しました。当時の年齢は27歳9カ月。上場時点の創業経営者の年齢の若さで史上4番目だったそうです。ところが、それからわずか2年で債務超過に陥るのです。上場企業が債務超過になるまでのスピードも史上4番目という不名誉な記録をつくりました。そこからの日々は今でも忘れられません。今回は、私の人生でも最もつらい経験の一つだった当時のことをお話ししようと思います。

日経ビジネス2020年10月26日号 62~65ページより目次