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ファーストリテイリングの柳井正会長との面談を経て、ジンズのビジョンを決定。覚悟を決めて新たな価格戦略と新商品の開発に乗り出した。「やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい」。そんな気持ちで大勝負を迎える。

田中 仁[たなか・ひとし]氏
1963年前橋市生まれ。信用金庫勤務などを経て88年ジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)を設立。エプロンやバッグなどの雑貨事業を手掛けていた2001年に「JINS天神店」を福岡市にオープンしアイウエア事業に進出。06年大証ヘラクレス(現ジャスダック)上場、13年東証1部上場。慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。(写真=竹井 俊晴)

 「これに基づいて価格戦略も商品開発もすべてをやり切ろう」。ファーストリテイリングの柳井正会長との面談を経て2009年1月にジンズ(当時はジェイアイエヌ)のビジョンを決めた後、私の心から迷いが消えていきました。

 決めたビジョンは「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」。後から考えるとビジョンよりも「戦略」と言った方が適切なものでしたが、これを決めたことで私の腹は固まった。「やり切って、それで負けたら会社を辞める」。そんな覚悟をしていました。

 最初に手を着けたのが、上場後の失速の一因となっていた追加料金の問題です。5000円と8000円(いずれも税抜き)のツープライス制を導入していましたが、球面レンズを非球面レンズに変えたり、薄型にしたり、度を強くしたりすると追加料金がかかって2万円を超えることもあったのです。この頃には老舗チェーンも2万円ほどの単一価格販売を始めていました。当初は安さを売りに快進撃を続けたジンズの競争力が弱まっているのは誰の目にも明らかでした。

「ジンズは終わった」と喜ぶ競合

 我々は新しい価格を打ち出すことにしました。「追加料金ゼロで税込み4990円から購入できる」というものです。後から聞いたところによると、競合他社は「これでジンズは終わった」と喜んでいたのだとか。それぐらい型破りな料金設定でした。