進めてきた外食産業の多角化が新型コロナウイルスで裏目に出た。2011年以来の赤字を外食産業を変革する「チャンス」と捉える。33歳のときに経験した日本債権信用銀行の経営破綻で培った信念は揺るがない。

(写真=陶山 勉)

 社長を退いてはや4年。会長となって以降、ロイヤルホールディングスの経営で自分が出る幕はほとんどありません。2020年は京都大学のビジネススクールで教えるなど、新たな活動で社会貢献できればと考えていました。

 そんな考えが散り散りに吹き飛ばされる状況になりました。新型コロナウイルスの脅威が降りかかってきたのです。2月以降、機内食部門の売り上げが急減し始めたのを皮切りに、ホテル、外食、空港や高速道路のサービスエリアなど、手掛けるすべての事業が大きな影響を受けました。1つの事業に依存しない外食産業のあり方を模索し、多角化を進めてきたのですが、それがすべて裏目に出てしまいました。

 「雇用は維持されるのか」「いつまで営業自粛を続けなければならないのか」。5月下旬、私はパソコンの画面に向かって、従業員からのこうした質問に直接答えていました。20年1~6月期の赤字見通しを発表した直後です。投資家に現状を伝えるためにいち早く見通しを開示したのですが、従業員を不安にさせてはいけない。ウェブ会議システムを使い、1回50人ずつ、13回にわたって従業員向け説明会を開きました。

 約800ある店のうち利益水準が低い店は閉鎖する方向であることなど、これからの会社の方向性を伝えました。「漠然とした不安感を持って働くよりも、何が原因で業績が悪いのかを明らかにし、危機感を持って難局を乗り越えよう」。こう呼びかけました。

 赤字転落は11年以来です。外食産業にはこれまで幾度となく危機が訪れました。ですが、今回は経済危機や自然災害とは異なり、終わりの見えないパンデミック(世界的大流行)。長期間にわたり経済が回復しない可能性が高いでしょう。経営判断のほとんどは黒須(康宏社長)に任せていますが、こうした危機だからこそ、会長としてやらなければならないと思うことがたくさん出てきました。

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