ドキュメンタリー番組に取り上げられ、高速ツアーバスは「安かろう悪かろう」と世間から責められた。他社で発生した死傷事故をきっかけに、業界代表として安全面の不安を払拭すべく奔走。「高速バスで都市間の移動を手軽にする」という目標を達成し、ローカル鉄道の再生にも乗り出す。

2007年4月30日、「高速ツアーバス 格安競争の裏で」と題したNHKスペシャルが放映されました。番組が終わるなり、部下から怒気のこもった電話がかかってきました。「あれは何なんですか。安全対策に取り組んでいるという取材内容とは全然違う」と。会社のイメージは地に落ち、売り上げも大きく下がることになりました。
「チャーター料金を上げてください」と切り出す貸し切りバス会社の社長。「それはできません」とはぐらかす私。そんな番組になっていました。今でも私は「下請けを締め付ける悪者」と思われているかもしれません。しかし、このバス会社との間に直接の取引関係はなかったのです。
貸し切りバスでは、多客期などバスが足りなくなる時期に、運行を請け負ったバス会社がさらに別の会社を使うことがあります。業界では「傭車(ようしゃ)」と呼んでいます。
当時、傭車先の安全性の担保は、「当社が運行をお願いしたバス会社の責任」と考えていました。しかし番組スタッフに促され、安全チェックということで傭車先に出向いたのです。まさかその場で料金の話が出るとは思っていなかった。私の発言は「直接契約していないので、料金の交渉は間に入っているバス会社とやってほしい」という趣旨でした。
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