野菜事業の撤退を経て、ジーユーの経営に携わることに。990円ジーンズが大ヒットするも、ジーユーの業績は低迷。失敗を糧に「みんなの声」に基づく経営にたどり着いた。

常識を覆すとは何か。競合がひしめくアパレル業界では常にそれが問われます。2008年に私が副社長として加わったブランド「ジーユー」もそれを追い求めて自問自答を繰り返していました。
ブランド誕生から2年ほどたっていたのですが、ジーユーは苦戦を強いられていました。売れない理由を知ろうと、30軒近くあった都内の店舗をすべて回りました。すると、お客さんがいないため店員同士が会話するなど、散々な状況でした。店舗に並ぶ商品も統一感がなく、誰に対して何を売るのかが明確に定まっていなかったのです。
ファーストリテイリング(FR)が低価格帯を攻めるために作ったのがジーユーです。当初は価格帯を「ユニクロ」より3割ほど安い「7掛け」に設定していました。ただ、SPA(製造小売り)のユニクロと異なり、当時のジーユーは仕入れた商品を売ることが中心で、商品に統一感がありませんでした。ベーシックのユニクロとの違いを出すためにトレンド性のある商品を仕入れても、売れない商品が大量に出て、値引き販売をするため利益が残らない。
どこから手を着けるべきか悩んでいたある日、妻が私に言ったのです。「ジーユーは安さが売りと言うけど、ユニクロに比べて安いと感じない」
ユニクロは週末にセールを実施します。その価格は、ジーユーが「ユニクロの7掛け」で付けた価格とほぼ同等でした。中途半端な安さで、質も高くない。それでは買ってもらえません。トレンドを取り入れるのをやめ、仕入れもやめると決意したのです。
990円ジーンズで一発勝負
当時のジーユーは黒字化が見えず、事業の継続が許されない瀬戸際に立たされていました。稼いでおらず、マーケティング費用も十分ではないため、一発勝負に賭けました。そこで登場したのが09年春夏シーズン投入の「990円ジーンズ」です。
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