中国・深圳を拠点とし、日本の非製造業をメイン顧客にデジタル機器開発を支援してきた。「電子機器のスーパードクター」を自認し、昨年には「aiwa」を冠した自社ブランド事業に乗り出した。中国で起業したのは34歳のとき。デジタル家電事業で2度の敗北を喫した末の決断だった。

「aiwa(アイワ)」。この名前を耳にしてワクワクした方は、私と同じ40代以上の方かもしれません。かつてAV(音響・映像)機器がアナログだった時代に高品質と低価格を両立させ、一世を風靡した家電ブランドです。
私が社長を務めるJENESIS(ジェネシス、東京・千代田)は昨年、デジタル機器向けにaiwaブランドの商標利用権を獲得し、スマートフォンやタブレットなどでaiwaを冠する製品の展開を自社ブランドとして始めました。まだ半年程度ですが、同世代以上の方を中心に多くの反響をもらっています。
自社ブランドの展開は大きな挑戦です。本業は、中国・深圳を拠点としたデジタル機器の設計・開発・製造の受託です。日本の非製造業がメイン顧客で、ハードウエアに加えてソフトウエアやサービスを含めたデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。ソースネクストが開発した携帯翻訳機「ポケトーク」やJapanTaxi(現GO)のタクシー端末など、手掛けた案件数は500を超えました。
中国では約3年にわたって「ゼロコロナ政策」が続き、ジェネシスも減収が続きましたが、ありがたいことに、行動制限がある中でも日本企業からの引き合いは強いまま。aiwaでの自社ブランド展開を含め、新型コロナウイルス禍が本格的に明けた今年から反転攻勢に出ています。
「ハードウエアのシリコンバレー」と称される深圳の地の利を生かし、今やデジタル機器の開発に悩む日本企業の「スーパードクター」としての地位を確立できた気がします。ただ私自身、社会人になるまでは製造業とは無縁の生活を送っており、まして深圳で起業するなんて夢にも思っていませんでした。実は起業に踏み切るまでにはいくつかの企業で経験を積み、2度の敗北を味わいました。まずはその経緯からお話ししましょう。
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