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スーパーは地域密着であるべきだとの信念を持って小濵裕正氏はダイエーからカスミに移った。東日本大震災をきっかけに店舗に権限を委譲し、顧客を知る現場が自ら考える組織を目指している。商売の原点を大切にしながら、流通業で働くことの意義を若い世代に伝えたいと意気込む。

小濵 裕正[こはま・ひろまさ]
1941年、大阪府生まれ。65年神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒、主婦の店ダイエー入社。83年北海道ダイエー専務。87年マルエツ副社長。97年ダイエー専務。2000年ダイエー退社、カスミ顧問、副社長を経て02年カスミ社長、10年会長。15年ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス会長。18年日本チェーンストア協会会長。
(写真=的野 弘路)

 2011年の東日本大震災で、茨城県を地盤とするカスミも、ほとんどの店が何らかの被害を受けました。天井が落ちたり、入り口のドアのガラスが割れたりするなど、大きく被災した店も、20店舗ほどありました。

 地震で混乱する中で、各店舗の店長は自分たちで判断して、地域のお客様が望むことを実現しようと動いてくれました。例えば、商品の値段を「これはもう50円でいい」などと柔軟に変更した店長もいました。この価格ならお客様が買えて、会社もそんなに損をしないと、自分で計算して決めたのです。

 この時、「もっと現場を信用しても大丈夫だ」と気付かされました。ダイエーでの経験を経て、中央集権は望ましくないと言いながら、本部が上意下達であれこれ店に指示するというやり方が、実際には続いていたのです。

 震災の後、つくばの本社にいても店の状況やお客様が何を求めているのかは分からないとあらためて感じました。それは店長や売り場の人しか分かりません。そして現場は、個々の判断でしっかりと応えていました。

 そもそも商売とは、売れると思って仕入れて値段を決め、売れ残ると思えば見切って安く提供するものです。カスミの現場には、そういった商人としての感覚があると実感しました。