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35年間勤めたダイエーで、スーパーは地域密着が不可欠との信念を持った小濵裕正氏。ダイエーに顧問として残っていた2000年、カスミ創業家の神林章夫氏から誘われた。多角化で負債が膨らんでいたカスミの経営を立て直し、イオンの「連邦経営」に出合う。

小濵 裕正[こはま・ひろまさ]
1941年、大阪府生まれ。65年神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒、主婦の店ダイエー入社。83年北海道ダイエー専務。87年マルエツ副社長。97年ダイエー専務。2000年ダイエー退社、カスミ顧問、副社長を経て02年カスミ社長、10年会長。15年ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス会長。18年日本チェーンストア協会会長。
(写真=的野 弘路)

 2002年に、カスミの経営を創業家の神林章夫さんから引き継ぎました。神林さんから「うちに来てくれないか」と誘われたのは、その約2年前。ダイエーで中内㓛さんと意見が対立して、顧問として籍を置いていた時でした。

 地域を地盤とする食品スーパーには興味がありましたから、やってみたいと思いました。神林さんには、中内さんにきちんと話を通してくださいとお伝えしました。中内さんはどう言うかなと思ったのですが、「せっかくだから行ってやれ」と送り出してくれました。こうして、35年勤めたダイエーを退社し、カスミに移ることになったのです。

 当時のカスミはスーパー以外の事業に手を広げ、有利子負債が積み上がっている状態でした。ファミリーレストラン事業や、ゲーム機販売のエンターテインメント事業など、本業と関係ない様々な分野に進出して、まるで「ミニダイエー」のよう。多角化の弊害が出ていました。

 多角化は本当に難しい。経営はヒト、モノ、カネという資源をすべて使わないとうまくいきません。余裕がない会社が経営を多角化すると、本業に力が入らず、ダメになっていきます。私が移ったころのカスミがまさにその状態でした。本業の食品スーパーに集中することが急務です。何より問題だったのは多額の借金でした。

日経ビジネス2020年5月18日号 52~53ページより目次