ビデオテープの廃プラ処理という手付かずの“都市油田”を発見。起業後初めて一大商機をつかんだ。しかし、急激な円高のあおりで需要は蒸発。売り上げ急減に見舞われる中、ペットボトル飲料に着目する。押っ取り刀でリサイクル事業に挑んだが、技術の難しさに出口の見えないトンネルに迷い込んでしまう。

「分ければ資源、混ぜればごみ。これ全部、ただで引き取ります!」。日本ビクター(現JVCケンウッド)工場に通うこと1カ月、ようやくビデオテープのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの廃材ヤードに通された私は、“宝の山”を前に声が弾みました。
同社は廃プラ処理に毎月300万円以上も支払っており、本来なら委託料がつくはずでした。残念ながら当時、私は産業廃棄物処理業者の許可証を持っていなかった。そのためテープ廃材の引き取りは無料にせざるを得なかったわけですが、そこは「損して得取れ」です。この商機に食らいつきました。
その後、ビクターと規格争いをしていたソニーのテープ廃材の受注にも成功。回収したPETは、加工委託先を通して繊維などに再生し、販売しました。この取引で年間約3700万円の売り上げを確保。波に乗りました。

しかし、再び世界情勢に翻弄されます。1985年のプラザ合意に伴う急激な円高です。各社はビデオテープ工場の海外移転を進めました。円高に耐えきれず閉鎖する工場も出てきました。
私は次の“都市油田”を探します。着目したのが80年代後半から普及し始めたペットボトル飲料。ボトル容器メーカーや廃プラ事業者を訪ねて情報をかき集めました。使用済みボトルは粉々に砕き、溶かして「ペレット(粒状の固形樹脂)」に再生していましたが、再生処理会社は異口同音にこう言うのです。「あれはやっかい。ペレットにしたらパキパキ折れちゃうんだから」と。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1717文字 / 全文2497文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「不屈の路程」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?