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妻と2人で開いた「カレーハウスCoCo壱番屋」を世界最大のカレー専門店チェーンに育て上げた。余計な商売に手を出さず、愚直にお客様の声を聞き続けてきたことが成功の要因と語る。壱番屋は現在、ハウス食品グループ本社の子会社となっているが、その成功の軌跡は色あせない。

 「カレーハウスCoCo壱番屋」(以下、ココイチ)は2013年に、世界最大のカレー専門店チェーンとして、ギネス記録に認定されました。店舗は現在、日本をはじめ、世界12カ国を合わせて約1500店に広がりました。国内のカレー専門店の中でも、壱番屋の次はいずれも数十店規模ですから、群を抜くナンバーワンといえるでしょう。

 飲食業に関しては全くの素人だった私と妻の直美が1978年に1号店をオープンした頃には、とても想像できなかった成長ぶりです。

パイオニアは「王道」を 貫けば勝ち残れる
(写真=下:共同通信)

 講演に呼んでいただいて各地で私なりの経営論をお話しする機会があるんですが、よく「ココイチの成長の秘密は何ですか?」と尋ねられるんですよ。でも困るんですよね。だって、秘密と言えるほどの特別なことは何一つやっていないんですから。ここまで来られたのは、外食業界の七不思議の1つだと、本気で思っているんです。

 ただ、路面店でチェーン展開するカレー専門店としては当時、外食業界でもほとんど例がないパイオニアだったことは、大きかったかもしれません。

着実に成長を続けてきた
●壱番屋の総店舗数の推移
注:店舗数は期末時点 2017年は9カ月決算

 元来、カレー専門店というのはチェーン化しやすい業態なんですよ。食材を工場で大量に集中調理して、店舗ではそれを加熱して盛り付けてお客様に提供する。カレーは他のメニューと比べれば食材ロスがほとんど出ませんしね、魅力だらけですよ。だから最初は取材も受けずに、愛知県を中心にこそっとやっていたんです。資金力がある大手にまねされたらひとたまりもありませんから。86年に東京に進出してからは、そうもいかなくなりましたが。

 パイオニアの有利な点は、奇策に頼らなくても、正攻法の「王道」を愚直に貫いていければ勝ち残れるという点ではないでしょうか。

 いつでもお客様の方を向いて、求められている商品とサービスをしっかりと提供する。多少業績が良くなっても、余計な商売に手を出したり、派手な遊びにお金や時間を使ったりせずに、ひたすらお客様と従業員の皆さんのことを考え、行動する。経営者がこれを本気で毎日続けられたら、会社は必ず成長しますよ。「カレーといえばココイチ」という信頼を早い時期に獲得できたことが、その後、全国や世界に飛躍する成長の土台になっています。

 経営者なら誰しも「俺は真面目にやっている」と思うものです。でも、本当に本気で、よそ見をせずに、トップが誰よりも一所懸命に働いて、毎日の成果をコツコツと積み上げて、自分で立てた目標を必達する。それが実践できている会社は多くはありません。

 それに外食業界は人気が出れば短期間で売り上げを伸ばすことができます。しかし身の丈以上の速度で店を広げれば、それを支える「人」の成長が追い付かずに、必ずサービスにほころびが生じます。流行を追いかけて、新しい業態に次々に手を出せば、既存の事業がおろそかになります。

日経ビジネス2020年3月30日号 100~103ページより目次