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エレコムはこれまでパソコンやスマートフォンのアクセサリーや周辺機器で成長してきた。 だが、創業者の葉田順治氏は、「片翼で飛んできたようなもの」と満足していない。 30年間我慢してきた「技術」をもう片方の翼とする第3の創業で、次の世代への引き継ぎに備える。

葉田 順治[はだ・じゅんじ]
1953年、三重県熊野市生まれ。小学5年生の時に兵庫県芦屋市に転居。76年甲南大学経営学部を卒業し材木問屋に就職。77年実家の製材工場再建のために熊野市に戻る。86年エレコムを創業。96年3月期に赤字転落。2006年ジャスダック、13年東証1部上場。パソコンやスマートフォンのアクセサリーや周辺機器などを手掛ける。
(写真=的野 弘路)

 かつて「ひも屋」と馬鹿にされたエレコムが、量子コンピューターに参入するといったら皆さん驚くでしょう。僕は今、それを目指せるのが面白くてしょうがない。これまでは他人が「やらない」面倒くさいことをやってきましたが、これからは他人が「やれない」面倒くさいことに挑みます。それが、パソコン、そしてスマートフォンのアクセサリーや周辺機器に次ぐ、第3の創業です。

 2017年にエレコムのグループに仲間入りしたディー・クルー・テクノロジーズにすごく優秀な技術者たちがいます。元富士通の技術者たちが中心となって17年前に創業した会社で、昨年は理化学研究所からの受託でスーパーコンピューターのプロセッサーを作りました。ディー・クルーが挑むのは、極低温で冷却する必要がある巨大な装置ではなく、常温で動作する小型の量子コンピューターです。僕には技術的なことはさっぱり分かりませんが、実現すれば5年後くらいには自動車や産業用機械などにも組み込めるそうです。

 ディー・クルーは、センサーやアルゴリズムなどで高度な技術を持っていますが、マネタイズ(収益化)が下手でした。最近、そのような会社に仲間になってもらっています。16年に加賀電子からエレコムグループに入ったワークビットもそう。この会社は、ハードウエアやソフトウエアの設計開発力や解析能力が高い。エレコムには調達や営業、マーケティングなどマネタイズのノウハウがあります。そこに技術力を合わせれば相乗効果がめちゃくちゃある。

 僕には創業から30年あまり、ずっと悔しくて我慢し続けてきたことがありました。採用した優秀な技術者がなかなか定着してくれてなかったことです。東京大学や早稲田大学、慶応義塾大学などトップ校の技術者を採用してもすぐに辞めてしまっていた。「何だ、マーケティングの会社じゃないか」というわけです。ようするにエレコムは、片翼で飛んできたようなもの。もう片方の翼、技術力が足りませんでした。