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 成長軌道に乗ったエイチ・アイ・エスだが、「ベンチャー100人の壁」にぶつかる。澤田氏は組織体制を整えつつ、旅行ツアーの販売など事業の多角化も進めていく。大手が手掛けないニッチな分野を攻め、そこでナンバーワンになる戦略に活路を見いだした。

澤田秀雄 [さわだ・ひでお]
1951年大阪府生まれ。73年に旧西ドイツのマインツ大学経済学部に留学。80年、インターナショナルツアーズ(現エイチ・アイ・エス)を設立。格安航空券の販売を始める。96年にはスカイマークエアラインズを設立。2010年にはハウステンボスを子会社化し、15年には変なホテルを開業するなど、事業を多角化してきた。
(写真=的野 弘路)

 創業から5~6年目くらいでしょうか。会社経営がグラついた時期がありました。社員のモチベーションが低下し、辞める人も出てきたのです。

 社員が20~30人くらいのときは、私が面倒を見ることができます。「最近落ち込んでいるようだな」と思ったら、声を掛けられる。でも、100人、200人と増えていくと、そうしたコミュニケーションは難しくなります。一度立ち止まり、きちんとした組織を作る必要があると痛感しました。

 人事や総務、経理などの部門を作ったのは、そのときです。総務があれば、社員から不満の声が上がっても吸い上げることができます。

 会社がグラついたとき、もう一つ大事なことがあります。会社の目標を立て、みんなでその方向に進むことです。私たちは、「株式上場」や「海外支店開設」などを目標に掲げました。そして実際、1985年に香港支店を開き、95年には店頭公開を果たしたのです。

中国ツアーがヒット

 組織体制を整えるとともに、事業も少しずつ広げていきました。私をはじめ、たくさんの旅行好きがいる会社でしたから、一般には知られていないニッチなツアーを企画しました。人気だったのは、中国ツアー。当時は観光で中国に入るのは難しかった。でも実は、香港ではビザが取れたのです。東京から香港まで飛行機で向かって、ビザを取り、そこから陸路で中国の広州まで行く。そこで観光し、また香港などから帰ってくればいい。往復の航空券と、香港のホテル宿泊をセットにして売り出すと、ヒット商品になりました。

 初期の頃は、旅慣れたお客さん向けの商品がメインでした。その後、徐々に一般向けのツアーの販売も始めました。そのときに大切にしたのは、大手旅行会社があまり手掛けていない行き先から攻めることです。