前回までのあらすじ

 月刊誌で経済を担当する記者、池内貴弘の高校時代の交際相手で、地元の仙台あけぼの銀行に勤める千葉朱美が自殺した。池内は仙台で朱美の自殺の原因を調べる。その背景には、銀行の無理な営業体制があることが濃厚だった。朱美の母、季子は池内に「敵を取って」と懇願する。

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(3)

 「スティーブは抵抗を続けると断言しましたが、現下の状況を総合的に勘案すると、Fed(フェッド)の置かれている状況は極めて厳しいと言わざるを得ません」

 古賀が顔を上げると、額の後退した小太りの男がスクリーンに表示された写真を指した。

 〈スティーブ・ウォーターズFRB議長と南雲壮吉(なぐも・そうきち)〉

 白髪でセルフレームのメガネをかけた白人男性と、壇上にいる南雲がにこやかに握手を交わしている。日付は1週間前、場所はワシントンDC郊外のレストランと注釈が添えられている。

 「米国史上、これほど金融政策の独立性が脅かされたことはありません。スペンサー大統領に国際的なマネーの仕組みを説いても無駄で、ゴルフの実況中継があるから説明を終わらせろ、そうせっつかれたとスティーブは嘆いていました」

 南雲が軽口を叩くと、高層ビルの会議室に集まった20名ほどの参加者が笑った。

 「これから話す内容について、リポートや各種SNSで発信することは絶対にやめてください。万が一、情報がこのメンバー以外に漏れた瞬間、私はスティーブと会う権利を失くします」

 南雲が眉根を寄せた。

 「それでは彼と約1時間話した詳しい内容を、皆さんにお伝えします」

 南雲は演台にあるパソコンを操作し、スクリーンの画面を切り替えた。

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