前回までのあらすじ

 月刊誌記者の池内貴弘は、故郷の地銀に勤めるかつての女友達が、東京に住む池内の叔母に土地活用を持ち掛けたことを不審に感じる。金融コンサルタントの古賀遼は米大統領の強硬な金融緩和路線に注目する。現首相がかつて日銀に圧力をかけ量的緩和を継続した際、古賀自身も暗躍していた。

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(8)

 「新年号の柱は〈芦原支持vsアンチ芦原 徹底討論〉で行きます。既に各界著名人のリストアップは済んでいて、対談のスケジュールを調整しています」

 編集部の大きな丸テーブルで、副編集長の布施が言った。布施の隣で編集長の小松が腕組みし、他の編集部員や記者、外部のライターら計15名が神妙に話を聞く。池内はメモ帳を開き、布施の言葉を書き取った。

 「あとは来年活躍が期待される与野党若手議員インタビュー、来年の選挙予測で政治系の企画を締めます」

 池内がペンを走らせていると、布施が言葉を継いだ。

 「経済系の企画は、〈急浮上する世界経済の爆弾〉と題し、広く市場のリスク要因をピックアップし、専門家に株価や外為市況の予測を依頼します。いいですね?」

 布施が池内に目を向けた。

 「これから専門家のピックアップ作業を急ぎます」

 「金融機関のアナリストやエコノミストだけでなく、これはという面白い人選も頼みます」

 面白いとはどういう観点を指すのか。喉元まで出かかった言葉を飲み込み、池内は頷いた。人選を行い、話を聴きに行く時間を勘案すると締め切りまでに残された余裕は少ない。

 「このほか、著名人や事件事故の当事者インタビューの類い、スキャンダルは臨機応変に対応します」

 小松が低い声で告げ、会議はお開きとなった。ガタガタと椅子が動き、各自が持ち場に散っていく。編集部に配属となって2週間経過したが、やりたいことはもちろんのこと、経済というざっくりした割り当ての中で、自分なりのテーマは未だ見つけられない。

 自席に戻りノートパソコンを開いた。メールが1件着信していた。差出人はかつて新書の担当営業マンとして何度か顔を合わせたフリーの経済ジャーナリストだ。

 〈ご丁寧な異動の挨拶、ありがとう。近々、メシでもどう?〉

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