「他のカップルや親族に1度も合わずにホテル内で過ごすことが可能です。ホテルマンをあちこちに配置し、常にそれぞれの動線をチェックするのです。姪っ子の結婚式でこのサービスを知り、応用したまでです」

 「なるほど、そういう経緯でしたか」

 南雲が感心したように頷いた。

 「南雲さんたちの計画は極秘です。もし他所(よそ)に漏れ出すようなことがあれば、様々な圧力がかかるでしょう。ネタ元を守るために我々は手間隙を惜しみません」

 小松が低い声で言った。その言葉に嘘はない。小松や高津は何度も修羅場をくぐった歴戦の記者兼編集者で、暴力団に追われる証言者を1年以上匿ったことがある。このほか、独占インタビューを取るために大手企業を告発した若者を社の保養施設で保護したことも1回や2回ではない。ホテルの1室を予約し他の客にばれぬよう手配することなど容易(たやす)い。

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