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 学会はパワハラが横行する閉鎖的な世界だ。過度のストレスを和らげるために、金融取引にのめり込む輩は今もいる。

 古賀の頭の中に、こうした金の亡者を地獄へと案内する金融ブローカーたちの顔が浮かぶ。彼らに照会をかければ、この2人の学者が危うい取引に手を染めていないか、比較的容易に判明するはずだ。調べの対象を、貸し出し先に窮する中堅中小のノンバンクにまで広げれば、夫人や親戚名義の怪しげな金の流れも捕捉できる。

 「あとはネット証券や仮想通貨の人脈にもそれとなく尋ねてみます」

 「よろしくな」

 現在、証券会社の店頭カウンターに直接出向く個人投資家などいない。個人向けの証券取引の大半はインターネット経由だ。もう一つは仮想通貨だ。ネット上で取引する分には、リアルなカネの流れが生じない。値上がりした仮想通貨を売り、これをリアルなマネーに替えたときでなければ国税庁も容易に手が出せない。証券マンから仮想通貨取引のプロに転じた元同僚や知り合いが何人かいる。互いに商売上の機密を守る仁義が通じる相手ばかりなので、照会は可能だ。

 「おまえの調べ、それにこっち側の分が終われば2人のうちから1人に絞る。その後は国会承認を経て就任という段取りだ」