前回までのあらすじ

 月刊誌記者の池内貴弘は金融界の実情を調べるうち、コンサルタントの古賀遼に出会い、親友の会社を再建するための支援を受ける。編集長の小松勝雄は古賀を「裏の掃除屋」と呼び、池内に古賀の取材を命じる。古賀を悪人だと思えない池内は、戸惑いながらも古賀の追跡を始めた。

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(9)

 日比谷の地下駐車場を出た高級セダンは、内堀通りを大手町方向へと走り出した。古賀は右隣の磯田の顔を一瞥した。老練な政治家は顔をしかめたまま、葉巻をふかす。薄く開いた窓から、紫煙が夜の街へと吸い込まれていく。ヘッドレスト脇にある小型LEDライトに照らされた磯田の額には、深い皺がいく筋も刻まれている。相当に機嫌が悪い。なんどか煙を吐き出したあと、磯田がようやく口を開いた。

「急に呼び出して悪かったな」

「とんでもありません」

 古賀は頭を下げた。

「新時代の続報の中身は承知しているか?」

「続報が出ることを偶然聞いただけで、詳細は存じません」

「そうなのか」

 舌打ちすると、磯田が窓の下にある灰皿に葉巻を押し付けた。

「古賀にあたっても仕方ねえよな。一番早く情報を取ってきた恩人に失礼だった」

 磯田がぺこりと頭を下げた。

「やめてください、大臣」

「最近、どいつもこいつも緩んでやがってな、イライラしている」

 磯田が前のめりになり、運転席の背後のラックから夕刊を取り出した。

〈芦原内閣、また閣僚が問題発言〉

〈官邸に忖度? 中央官庁人事に異変〉

 夕刊の1面には政権関連の見出しが躍る。

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