「三田電機の粉飾事件では警視庁捜査二課も動いていました」

 詳しいことは知らないが、捜査一課が殺人や強盗など凶悪犯を負うように、捜査二課は詐欺犯や横領事件、贈収賄を扱うと小説で読んだことがある。三田電機の決算が粉飾であると明らかにすることができれば、二課という組織の大手柄になる。端緒があったのであれば、ネタを追う記者のように刑事も真相を探るはずだ。

 「二課が摘発したというニュースは記憶にありません」

 「ええ、ストップがかかったと坂口記者から聞いています」

 小松が手帳から紙切れを取り出し、池内の前で広げてみせた。

 「人事記事?」

 「ここです」

 どこの新聞かはわからないが、官庁の主要人物の異動を知らせるベタ記事だった。小松の指先を凝視する。

 〈警察庁人事 警視庁捜査二課小堀警視→神奈川県警捜査二課長〉

 「坂口記者がなんどもアタックしましたが、絶対に彼は口を割らなかったそうです」

 「圧力がかかった?」

 池内は東田相談役と芦原首相が握手する切り抜きを見た。

 「そう考えるのが妥当です」

 小松の声を聞き、池内は天井を仰ぎ見た。

 千葉の死、宮城県警の事情聴取という副産物から古賀と知り合い、そして親友・勝木の家業再建まで話が進んだ。だが、その重要なアドバイザーの古賀が、数々の経済事件の裏側にいた……。

 「坂口記者も古賀氏に取材を?」

 池内の問いに小松が強く首を振った。

 「商売が商売です。極度のマスコミアレルギーがある人物だと聞いていました」

 「それがどうして私と?」

 「そこが謎です」

 小松が身を乗り出した。

 「あの……」

 小松の両目が再度鈍い光を発した。