この記事は日経ビジネス電子版に『中国人やインド人が、すぐにちゃぶ台返しをする理由』(2021年8月20日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月20日号に掲載するものです。

グローバルチームを率いる日本人に、ぜひ頭に入れておいてほしい日本文化の特徴がある、というメイヤー教授。国内のみで活動する企業で、文化を分析する意義についても尋ねた。

エリン・メイヤー[Erin Meyer]
INSEAD(インシアード)マネジメント実践教授
大学卒業後、米政府が運営するボランティア組織「平和部隊」の一員としてアフリカで2年間英語を教える。INSEAD客員教授を経て2021年から現職。専門は異文化経営で、企業幹部向けプログラム「国境と文化を超えるリーダーシップ」のディレクターも務める。世界各国の文化を8つの指標で分析する「カルチャー・マップ」で注目を集め、世界で最も影響力のある経営思想家を選ぶ「Thinkers50」に過去2度選出。

 INSEAD(インシアード)のエリン・メイヤー教授が提唱する多文化分析のツール「カルチャー・マップ」は、各国の文化を多面的かつ相対的に捉える重要性を説くものだ。これまでに世界67カ国の文化をマッピングしたが、とりわけ日本の文化は特徴的だという。

 「世界各国のカルチャー・マップを比較すると、米国、イスラエル、オランダなどいくつか個性的なマップを持つ国があり、日本もその一つだ。8つの行動指標のほとんどで左右両極に位置している、つまりどの指標においても他国より極端な傾向があるのだ」

 8つの指標のなかでも、マネジメントという観点から最も重要なのが「リーダーシップ」と「意思決定」の2つだとメイヤー教授は指摘する。リーダーシップは地位や肩書にこだわらない平等主義か、こだわりの強い階層主義かを示すのに対し、意思決定はチーム内での合意形成を重んじるかトップダウンかを示す。トップダウンの文化では、トップによる「ちゃぶ台返し」も珍しくない。両者の違いに無頓着であることが、チームの不協和音の原因になるケースが多いという。

 「例えば米国のケースを見ると、リーダーシップは平等主義的だ。管理職は部下とファーストネームで呼び合い、会議中は意見を言うよう促す。しかし意思決定の場面ではトップダウン型になるケースが多く、他の文化の出身者は面食らうことも多い。 

 だが米国以上にユニークなのが日本だ。アジアの多くの国と同じように日本のリーダーシップは階層主義的だ。上下関係がはっきりしていて、部下が人前で上司に意見することはめったにない。

日本はどの指標でも他国より極端
●リーダーシップ文化のマッピング図
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出所:エリン・メイヤー著『Being The Boss In Brussels, Boston, and Beijing』(米ハーバード・ビジネス・レビュー誌2017年7・8月号掲載)から本誌作成

 リーダーシップが階層主義的な国の多くは、意思決定はトップダウン型になる(図右上)。迅速で柔軟、一度決まったことでもすぐに変更や修正がある。中国やインドがこうしたケースだ。

 一方、日本の意思決定は合意形成型だ(図右下)。組織のなかで合意を積み上げていく。意思決定に時間はかかるが、ブレずに迅速に実行される。

 リーダーシップと意思決定という2つの指標で、日本ほど正反対の極へ大きく振れる国は他にない。階層主義と合意主義の共存という珍しいパターンが、他文化の人から見て日本の組織やリーダーは分かりにくいという印象を与え、摩擦を生む原因になる。

 同じようにヒエラルキーを重視するにもかかわらず、インド人は日本人リーダーが意思決定に時間をかけ過ぎるとイライラしてしまう。一方日本人は、インド人リーダーが一度決めたことをすぐに覆すとイライラする」

(写真=PIXTA)
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