この記事は日経ビジネス電子版に『文化的差異の8指標、世界のレンズで見た日本の姿とは』(2021年8月13日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月6日号に掲載するものです。
異文化経営のスペシャリストとして、エリン・メイヤー教授が注目されるきっかけとなった分析ツール「カルチャー・マップ」。そこから得られる示唆とは。また、コロナ禍はグローバル組織の運営に、どのような影響を及ぼしているか。
INSEAD(インシアード)マネジメント実践教授

INSEAD(インシアード)のエリン・メイヤー教授が提唱した「カルチャー・マップ」は、企業の管理職の行動のなかでも文化的差異が最も出やすい8分野を指標として、世界各国の文化をマッピングしたものだ。例えば「コミュニケーション」の指標では、言葉以外の情報(コンテクスト)を重視するハイコンテクスト型の傾向が強いのか、言葉に重きを置くローコンテクスト型の傾向が強いのかを評価する。「見解の相違」の指標では、意見が食い違うときに対立をいとわないか、対立を回避しようとする傾向が強いのかを評価する。文化に注目すべき理由を、著書『異文化理解力』(英治出版)では、次のように指摘している。
文化の影響に無自覚な管理職
国をまたいで仕事をするマネジャーの大部分は、文化が自らの仕事にどのような影響を与えているかほとんど理解していない。何十年も文化をまたいで仕事をし、各国へ頻繁に出張しながらも、文化が自分に与えている影響に無知で無自覚なことがよくある。
現代はどこで働いていてもグローバルなネットワークの一部だ。他の文化を読み解く方法を知り、陥りがちなわなを回避する方法を知らなければ、行き違いや不要な対立、決定的な失敗が生じる。文化の違いに注目するとステレオタイプに陥る懸念もあるだろうが、文化の差は関係ないと思って他者と接すると、自分の文化のレンズを通して相手を見るため判断を誤ることもある。
もちろん個人差はある。カルチャー・マップが示す各国の位置は、膨大な数の管理職への聞き取り調査から、それぞれの国で許容された、あるいは適切とみられる「平均点」を出し、さらなる聞き取りで微調整する方法で決めた。メイヤー教授が強調するのは、文化の相対的位置を見ることの重要性だ。
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