分別ある判断を下し、組織を導くリーダーになるにはどんなスキルを磨くべきなのか。野中理論が提唱する6つの概念のうち「実践知」「共通善」というキーワードに焦点を当て、いかに善い目的(パーパス)を追求すべきか考察する。

野中郁次郎[Ikujiro Nonaka]
一橋大学名誉教授
1935年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業。富士電機製造(現富士電機)を経て、67年に米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院に進学、72年博士課程修了。82年に一橋大学産業経営研究施設教授。「ナレッジマネジメント」「SECIモデル」といった理論を広めた。富士通や三井物産の社外取締役を歴任。2017年にはカリフォルニア大学バークレー校最高賞の生涯功労賞を授与された。(写真=吉成 大輔)

 前回は、環境変化に合わせて自己変革してきた米海兵隊の事例を取り上げた。野中郁次郎一橋大学名誉教授の提唱する「知的機動力」を最も体現しているモデルだ。もっとも、いかに優れた構造の組織であっても、リーダーの判断に問題があれば発展はおぼつかない。

 野中教授は、変化のただ中でタイムリーに判断し全員でやり抜くリーダーに必要な6つの能力を挙げる。それは、下の図の右に示した①善い目的の追求、②現実の直観、③場をつくる、④直観の本質を物語る、⑤物語の実現、⑥実践知を自律分散する、という6つだ。本稿では、①の善い目的を追求するために、何が善かを判断し、組織に浸透させるために必要なことを考察する。

SECIモデルを回すのは「実践知」
●知識を知恵に変える「実践知リーダーシップ」
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 まず「実践知」とは、机上の分析で仮説検証した形式的な知識「理論知」とは違う、実践の場で適切な判断を下すための知識。ゆえに野中理論は「静的」でなく「動的(ダイナミック)」だ。

アメーバ経営の真の目的

 変化の激しい市場では、物事は理論的に想定された通りには動かない。局面が瞬時に変わっても臨機応変に組織が知的機動力を発揮するには、リーダーの実践知が重要になる。その実践知は、常に変化する現場に身を置き、変化の本質を見抜き、ジャッジを繰り返す中から養成されていく。

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