人がつくる「知」に注目した野中郁次郎教授は1980年代、新たなイノベーションモデルを提唱し世界への突破口を開く。その多くは、革新力不足がささやかれて久しい日本企業が改めて学ぶべき、「古くて新しい視点」でもある。
一橋大学名誉教授

この連載では、野中郁次郎・一橋大学名誉教授の思考をたどりながら、今につながる新たな経営論をつくり上げるためのヒントを探っていく。
「知識創造理論」で米国の経営学界にデビューした野中教授。「知識」に着目する研究者がいなかったのは、「欠陥」に近かった、と野中教授は言う。
ノーベル賞理論の「欠陥」
「情報や知識という概念は、そもそも欧米から来たものだ。例えば哲学は『知』そのものである。だが、ノーベル賞経済学者ハーバート・サイモンが率いる『カーネギー・スクール』による、『情報は処理するもの』という認識が経営学研究の方向性を支配していたため、『知をつくる』という発想が希薄だった。一方で僕らは、重要なのは『情報』ではないのではないかとの問題意識で研究していき、やがて、それはカーネギー・スクールの理論の欠陥そのものだと分かってきた」
野中教授が新しい研究を英語で世に出すうえでは、共著者の存在が大きかった。当時出会った、米ハーバード経営大学院の竹内弘高教授である。
「竹内教授は当時、米カリフォルニア大学バークレー校でPh.D.(博士号)を取った後、米ハーバード経営大学院に就職していた。そして1982年、竹内教授がハーバードから日本の僕を訪ねてきた。ハーバード大学のウィリアム・アバナシー教授から依頼があるという。イノベーションがテーマの会議を開くから、日本の事例を発表してほしいという話だった。
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