「マーケティングの父」とも称される経営学者、フィリップ・コトラー米ノースウェスタン大学経営大学院教授。本連載では、新常態のマーケティングを語り下ろす。

フィリップ・コトラー[Philip Kotler]
米ノースウェスタン大学経営大学院名誉教授
1931年生まれ。米マサチューセッツ工科大学で経済学の博士号を取得(Ph.D.)、その後米ノースウェスタン大学経営大学院の教授に就任。「近代マーケティングの父」と称される。教科書として版を重ねる『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』(丸善出版)ほか、著書多数。

 ビジネスパーソンで、フィリップ・コトラー教授の名を知らない人はいないだろう。マーケティングの父と呼ばれる経営学者で、世界的な権威である。今回から約2カ月にわたり、コトラー教授に、「コトラー流・新常態のマーケティング」を聞いていく。

私が経済学に当惑するまで

 「最初に少しだけ、私がマーケティング研究にかかわったいきさつをお話ししたい。私は、米シカゴ大学と米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学者としての訓練を受けた。私が経済学を学んだのは、利益や所得がどう生み出されるかを理解するためだった。すべての人が確実によりよい暮らしができるようにすることに、常に関心があったからだ。当時はマーケティングには関心がなかった。

 だが私は最終的に、経済学に当惑した。何より基本的な理論が受け入れがたかった。経済学は、すべては需要と供給で成り立ち、すべての老若男女が合理的な選択をするとの前提に立つ。そんなことはあり得ない。

 人々が、本当はどのように行動し、好みや希望を満たすのかが知りたかった。そこで目を向けたのがマーケティングだった。

 1962年に分岐点があった。当時の恩師は言った。『経済学を教えたいか、マーケティングを教えたいか?』。そして私にこう助言した。『経済学はかなり原理が確立されているから変わることはない。だがマーケティングは変える必要があるぞ』。私は賛同し、マーケティングに関する書籍を読み始めた」

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