AI(人工知能)は人類から雇用を奪うのか。経済学者の間でも見解が分かれるテーマについて、2019年にノーベル経済学賞を受賞したアビジット・バナジー米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授が考察する。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部教授

2017年9月、欧米を中心とする経済学者の意見をまとめる「米IGM経済専門家パネル」が、「労働市場と職業訓練が現状のままの場合、ロボットやAI(人工知能)の台頭により、先進国で長期にわたり失業する労働者の数が大幅に増える」という見解について、それぞれに賛否を聞いた。
すると下のグラフの通り、「同意する」「強く同意する」が計38%、「同意しない」「全く同意しない」が計21%、「分からない」が29%という結果になった(回答なしは10%)。AIは人類から雇用を奪うのかというテーマへの答えは、経済学者の間でも意見が大きく分かれている。
バナジー教授は「強く同意する」と回答したという。一方、15年にノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン米プリンストン大学教授は「同意する」、行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー米シカゴ大学経営大学院教授は「分からない」と回答した。
とはいえ、過去、技術革新による自動化の進展が、たびたび職業の消失をもたらしてきたのは事実。産業革命期の英国では、自動化がラッダイト運動を引き起こした。AIも同様に社会不安を引き起こすというのがバナジー氏をはじめとする懸念派の考え方だ。
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