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インフラ投資の不足が、先端技術がトップ企業に偏る「指数関数のパラドックス」を招くと指摘したチェスブロウ教授。だがイノベーション失敗の原因は、それだけではない。
ヘンリー・チェスブロウ[Henry Chesbrough]
米カリフォルニア大学バークレー校教授(特任)
米スタンフォード大学経営学修士(MBA、最優等)、米カリフォルニア大学バークレー校で経営と公共政策の博士号(Ph.D.)取得。2003年、社内外の知的な協働でイノベーションを起こす必要性を説く「オープンイノベーション」の概念を発表。米ハーバード経営大学院助教授などを経て現職。

 前号で、政府や企業のインフラに対する投資不足により、イノベーションの恩恵が国・業界全体に行き渡らない「指数関数のパラドックス」が引き起こされていると指摘した米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院のヘンリー・チェスブロウ教授。今回は、チェスブロウ教授自身の過去の企業支援の経験などを基に、オープンイノベーションが失敗する理由を考察する。

 「大企業は既に稼ぎ頭の既存事業を抱えている。その状況で新規の収益事業を育てるのは容易ではない。特に難しいのが、育成のめどが付いた新規事業の種を本格的にビジネス移行させる段階だ。新規事業の種を探すイノベーション部門は、最新のトレンドを調べ、新たな事業機会を探す試行錯誤を繰り返している。それを収益にするには、ある時点でその種を事業部門に引き渡す必要がある。しかし、この両者の意識があまりに違いすぎるのだ。ここが、イノベーションの『死の谷』になり得る」

 「死の谷」とは、イノベーションを実行に移す時の関門を指す。乗り越えられないとプロジェクトが日の目を見ずに終わるため、「死の谷」と呼ばれる。