前回、企業の経営を監視するうえで「機関投資家が主要な役割を果たすべし」と主張したコリン・メイヤー教授。今回は、企業の目的「パーパス」とはどのようなものなのか、さらに掘り下げる。

コリン・メイヤー[Colin Mayer]
英オックスフォード大学サイード経営大学院教授
英オックスフォード大学卒業、同大学経済学博士(Ph.D.)。ロンドンシティ大学教授などを経て1994年から現職。2006~11年、サイード経営大学院学院長。企業統治が専門。ヨーロッパ経済政策研究センター(CEPR)、欧州コーポレートガバナンス研究所(ECGI)フェローなどを歴任。

 英オックスフォード大学サイード経営大学院のコリン・メイヤー教授は、企業の目的、パーパスは「稼ぎながら社会課題を解決すること」で、そのためには、株主である機関投資家が経営を監視することが必要と説いた。今回は、新型コロナ禍で見られた企業の行動変容などを例に、「稼ぎながら社会課題を解決する」経営について考える。

 「企業の目的、パーパスを、現在の新型コロナがもたらした危機と結びつけて考えてみよう。企業は『社会問題を解決』しなければならないから、当然、新型コロナウイルスとの戦いに参加し貢献しなければならない。ただ『稼ぎながら』となると可能な企業は限られる。

 例えば、自動車会社が製造ラインの一部を切り替えて、病院向けの人工呼吸器の生産に使うとか、医療用マスクのような医療器具を作るというのは、提供した医療用具が利益を生めば、まさに『稼ぎながら社会問題を解決』する理想的なケースになる。製薬会社が、治療方法とワクチンの開発を目指し、完成後に迅速にワクチンを大量生産できるよう準備するのももちろん、稼ぎながらコロナと戦うことになる。

多くはトレードオフに直面

<span class="fontBold">医療関連の事業会社だけがコロナ禍で活躍するわけではない</span>(写真=PIXTA)
医療関連の事業会社だけがコロナ禍で活躍するわけではない(写真=PIXTA)

 パンデミックに関連し、自社の活動が直接的な解決手段につながる企業は、どう行動すべきか比較的簡単に決まる。しかし自社の活動がコロナとの戦いとあまり関わりを持たない企業はどうすればいいのか。その場合、トレードオフという考え方が重要になる」

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