英オックスフォード大学サイード経営大学院教授

本連載の1回目で、会社の歴史とその存在理由をひもときながら、「会社は本来、公益のために存在すべきものだった」と断じた英オックスフォード大学サイード経営大学院のコリン・メイヤー教授。今回は、時に公益を損なっても利益の最大化にまい進する会社をどう「制御」するかに焦点を当てる。
「ガバナンス(企業統治)をめぐる日本の政策は、ここ5~6年で様変わりした。スチュワードシップ・コードと呼ばれる、機関投資家の行動指針ができたため、機関投資家は投資先の企業でより監督者としての役割を果たすことになった。とはいえ、これはまだお題目だけで、実効性は高くないと私はみている。それでも、2013年から14年にかけての日本におけるコーポレートガバナンス改革で定められた指針、コーポレートガバナンスコードは、英国のそれととても似通っていると思う」
変わるガバナンスの手本
英国をはじめとする欧米を手本に、経営監視のためのより強い権限を株主に持たせようとしてきた日本。ところがその欧米ではここへきて、行き過ぎた株主至上主義の見直しが進んでいる。従業員や社会、取引先といったステークホルダーがより経営に深く関与する方向に向かっている様子だ。いったいメイヤー教授は、どちらが適切であると考えているのだろうか。
「まず、これまでの日本における株主の経営への関わりを振り返ってみよう。日本における株主による経営監視の方法として、かねて存在してきたのが株式の持ち合い制度だ。投資先が積極的、かつ効率的に株主利益を追求しているか、それを目指すための経営陣と従業員の円満な関係が出来上がっているかなどを、互いにチェックし合う。この持ち合い制度は本来であれば、自社株買いと株式持ち合いに関する規制が緩められた00年以降、一段と普及する可能性があった。
だが実際には、『大企業同士が株式を持ち合うのはよくない。それより機関投資家や一般株主の影響力を行使できることの方が重要』とする声が主に海外投資家から高まった。こうして出てきた次の選択肢が、機関投資家に投資先の会社のお目付け役をしてもらうことだった。彼らは株式を長期的に保有しており、かつ投資先の経営にも積極的に関わっている。会社のモニター役を果たす外部の株主として、もっと主導的な役割を果たすべきだとなったのだ」
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