米カリフォルニア大学バークレー校のデビッド・ティース教授が提唱した「ダイナミック・ケーパビリティ」論は、世界中の経営学者が最も注目している新理論である。今週からその概要や応用例について、ティース教授に聞く。
米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院教授

米カリフォルニア大学バークレー校のデビッド・ティース教授は、1997年に「ダイナミック・ケーパビリティ」という概念を提示した世界的に著名な経済学者だ。ティース教授に師事した慶応義塾大学の菊澤研宗教授によれば、企業や経営者が「現状のまま利益を最大化しようとするのでなく、変化に応じて自己変革し、付加価値を創る力」がダイナミック・ケーパビリティだ。つまりは、組織イノベーションを起こす力である。
ティース教授は経営学者のピーター・ドラッカーを敬愛する。「ダイナミック・ケーパビリティは、ドラッカーの思想を理論にしたもの」と説明する。その理想に近い形として近年熱い視線を注ぐのが、中国の大手家電メーカー、ハイアールの経営理念「人単合一」(個人単位の市場目標を統合する)モデルだ。
「ダイナミック・ケーパビリティは、組織とその経営者が、変化に対応するため内外の知見を統合し、構築し、組み合わせ直せる能力のことだ(下図参照)。その点で最も注目してきた企業が、中国の家電メーカー、ハイアールだ。ハイアールには、ダイナミック・ケーパビリティの発揮を促進する組織構造がある。
ダイナミック・ケーパビリティを一言で言えば、『センシング(sensing)』『シージング(seizing)』『トランスフォーミング(transforming)』を実行する経営力だ」

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1765文字 / 全文2597文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「世界の最新経営論」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?