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企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に注目が集まっているが、日本企業は世界に比べ、動きが遅い。スイスのビジネススクール、IMDのマイケル・ウェイド教授が警鐘を鳴らす。

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マイケル・ウェイド[Michael Wade]
スイスのIMD教授兼DBTセンター所長
デジタルがビジネスモデル、ストラテジーやリーダーシップに与える影響の調査、研究、教育に取り組む。IMDによる世界各国各社の幹部向け公開短期研修「Leading Digital Business Transformation (LDBT)」のディレクターを務める。

 経営幹部育成で世界的に知られるスイスのビジネススクール、IMDのマイケル・ウェイド教授は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の権威で、IMDでも最も忙しい教授の一人だ。

 ウェイド教授は、「世界に比べ、日本のデジタル改革はスピード面で大きく見劣りする」と指摘する。IMDの世界競争力ランキングでも大きく順位を下げた日本。組織の問題か、日本の企業文化か、それともマネジメントの資質か。ウェイド教授に聞く。

IMD競争力ランキング最下位

 「日本ではデジタルに関して良い話と悪い話の両方がある。良い話は、デジタル技術そのものについてである。ロボティクスや通信技術、AI(人工知能)といった多くのデジタル技術力で日本は世界をリードしている。競争力に関するデータでも、日本はこの領域で強い。

 悪い話は、「企業の順応性」だ。例えば今年のIMDの世界競争力ランキングで、日本は起業家精神と企業の順応性の2つが63カ国中、最下位だった。アフリカ諸国、ベネズエラ、モンゴルといった国より下だ。ショッキングだ。厳密にいうと日本は極めて進んだ国で、世界をリードする分野もある。しかし変化に対する順応性、つまり組織文化の変えやすさやそのスピードを考えると、かなり問題が多い」

 IMDのランキングは、統計データとアンケートからなる。アンケートは世界中に多数のパネルがあり、日本に関してであれば日本人か外国人で、国際経験があり、日本に1年以上住む経営者や上級管理職が回答に協力している。そうした調査結果をさらに詳しく見ると、日本企業はシニアマネジャーが国際経験に乏しく、ビッグデータ活用やデータ分析ができておらず、有能なシニアマネジャーの人材層が薄いという傾向が読み取れる(下表)。

 「だが残念ながら、日本企業に危機感があるとは思えない。変革や技術に興味はあり、社長やリーダー層は、変わらなければいけないと一応分かっている。しかし、2~3階層下の人々は全く変革への意欲が見られない。中間管理職層だ。