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労働者の頭数でなく知的レベルが国の利益を決める時代が到来しつつある。世界の頭脳を青田買いする中国に対し、出遅れるのは日本。長期のデフレマインドから抜け出し、企業にチャレンジ精神を取り戻させることが重要だ。
(構成=中山 玲子)

井上 智洋[いのうえ・ともひろ]
駒沢大学経済学部准教授
1997年慶応義塾大学環境情報学部卒業。2011年早稲田大学大学院経済学研究科博士号取得。17年4月から駒沢大学経済学部准教授。専門はマクロ経済学。

 2014年、米グーグルが従業員数がたった数十人の会社を5億ドル以上で買収したことを読者は覚えているだろうか。なぜこれほど高額だったのか。この会社は後に、プロ棋士を打ち負かす偉業を成し遂げた囲碁AI(人工知能)「AlphaGo(アルファ碁)」を開発することになるディープマインド社だ。グーグルはディープマインド社の資産でも工場でもなくその頭脳を買った。

 AIの普及によって、労働者の頭数ではなく労働者の知的レベルが、一国のGDP(国内総生産)や企業の売り上げ・利益を決定づける「頭脳資本主義」の時代が到来しつつある。頭脳資本主義とは、神戸大学の松田卓也名誉教授による言葉だ。軍事の世界では既に、徴兵された国民の人数ではなく、ハイテク兵器を使いこなす職業軍人の質が戦争の勝敗を決めるようになっているが、こうした状況が経済でも起こっている。