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「株主第一主義」への向かい風が強まる米国。株主還元策にも厳しい視線が注がれる。「株主だけ優遇」から脱した経営が求められている。

ロバート・ポーゼン[Robert C. Pozen]
米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師
米ハーバード・カレッジを最優等で卒業、米エール大学で法学博士号取得。米証券取引委員会顧問、フィデリティ投信社長、MFSインベストメント・マネジメント会長を歴任。米ブルッキングス研究所上級フェロー。

 本連載では、米国の主要企業のCEO(最高経営責任者)が名を連ねる経済団体、ビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義」を転換した歴史的背景や本気度を考察してきた。簡単に言えば、米国におけるステークホルダー(利害関係者)重視の考え方の復活や、企業による社会課題解決に対する関心の高まり、格差拡大や社会システムに対する信頼の喪失などが相まって、「株主第一」に対する逆風となっている。

 最終回は、米国で主流の株主還元策「自社株買い」に対して鋭い批判が目立っていることの背景を考察する。法律の専門家で、機関投資家としての経験も豊富な米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師であるロバート・ポーゼン氏に聞く。

 「前回までも論じたが、企業は今、株主第一主義をめぐり、当局や世間からの攻撃にさらされている。不正会計を端緒に2001年に米エンロン、翌年米ワールドコムが破綻、08年にはリーマン・ショック、拡大する一方の所得格差……。一連の出来事を通じて現代米国社会の経済システムが、人々にすべからく奉仕するなどとはもはや誰も全く思わなくなった。もう別のシステムに頼らなければいけない。米国人はそのように感じている」