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株主第一主義の転換を掲げつつある米国の財界。ESG投資の広がりも背景にある。ステークホルダー志向との共通点などを考察する。

ロバート・ポーゼン[Robert C. Pozen]
米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師
米ハーバード・カレッジを最優等で卒業、米エール大学で法学博士号取得。米証券取引委員会顧問、フィデリティ投信社長、MFSインベストメント・マネジメント会長を歴任。米ブルッキングス研究所上級フェロー。

 米国企業が、格差拡大による世論の激しい反発と、政治家、活動家、さらには投資家の圧力にさらされ続けている。米国の主要企業約200社のCEO(最高経営責任者)で構成される経済団体ビジネス・ラウンドテーブルはそうした状況を受け、株主第一主義の転換に言及した。その背景にある議論について、米証券取引委員会の法律顧問や、米フィデリティ投信社長などを歴任した、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のロバート・ポーゼン上級講師に聞く。

 「株主第一主義を転換するとしたビジネス・ラウンドテーブルの声明文に対するフェアな解釈は、これからの企業活動は、株主価値だけでなく、ほかの価値も考慮しますとの表明と受け取るべきだと思う。そのため、実際に株主価値とそれ以外の要素の利害の対立が生じた時に、どちらを優先すべきかはその都度、見極める必要が出てくるだろう。

 声明文について、もし利害の対立があった時にも株主より従業員や顧客の利益を優先する、とまでは解釈すべきでない。声明文に署名したCEOや企業が、そんなことをするとは到底思えないし、米国の企業が日本企業みたいになりたいのだと解釈するのは間違いだ。

 日本では、ほかのステークホルダーの価値に比べ、株主価値のほうが支配的なわけではない。むしろ、アクティビストが『もっと株主価値を尊重するように』と主張しているような状態だ」

米国と日本は「両極端」

 両極端とも言える米国と日本の現状、日本でイメージする「ステークホルダーも重視」といった時の内容と、米国でイメージする内容は、かなり異なるとポーゼン氏は話す。

 「そうは言っても、米国の大企業が日本企業の立つ方向に一歩進もうとしているのは事実だ。ただ、日本企業のようにまでは決してならない点に注意が必要だ。日本企業は何年もかけて、顧客やサプライヤー、従業員の利益を株主よりもサポートし、株主価値をどうすべきかについて考え始めている段階だ。米国企業がそこまで進むことはない。日本も米国も、以前より広範囲な立場の人々の利益を考慮するようになってきた、ということは言える」