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米国の経営者団体が株主第一主義を見直すと宣言し、世界を驚かせた。米国型経営に今、何が起こっているのか。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のロバート・ポーゼン氏に聞く。

ロバート・ポーゼン[Robert C. Pozen]
米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師
米ハーバード・カレッジを最優等で卒業、米エール大学で法学博士号取得。米証券取引委員会顧問、フィデリティ投信社長、MFSインベストメント・マネジメント会長を歴任。米ブルッキングス研究所上級フェロー。

 米主要企業の経営者団体、ビジネス・ラウンドテーブルが8月19日、株主第一主義を見直す声明文を発表した。1997年以来の原則を転換し、世間を驚かせた。格差拡大や環境に対する関心の高まりもあり、「株主第一主義」に基づく米国型経営が転機を迎えつつある。

 米証券取引委員会(SEC)の顧問や米フィデリティ投信社長などを歴任した米マサチューセッツ工科大学(MIT)上級講師のロバート・ポーゼン氏に、米国型企業経営論の「今」を聞く。

 「米国企業のトップは昨今、政治家や一部の株主から、株主価値増大よりも幅広い視野で会社を経営すべきとの強いプレッシャーにさらされてきた。企業は株主以外のステークホルダー(利害関係者)、すなわち労働者、顧客、取引先や地域社会にも目を配るべき、と宣言したビジネス・ラウンドテーブルの声明文が発表された。ESG投資の広がりも背景にある。

 ただ、私はこれが本当に大きな変化をもたらすのか、単なる広報努力なのかが分からずにいる。声明文にはどの関係者を優先すべきかという優先順位が書かれず、ステークホルダーの間で対立が生じたら誰を優先すべきかの指針がない。役に立たないと酷評する人も多い。

ステークホルダー理論の復権か

 背景に(株主第一主義と対立する概念である)従業員や顧客を、長期的に株主価値をもたらす方法で支えようとする理論(編集部注:ステークホルダー理論)の広がりがあるのは間違いない」

 「株主第一主義経営」の起源は、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンが70年代に打ち出した主張とされる。当時、米国株価は低迷していた。