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AIアルゴリズムなどの開発に携わる、米スタンフォード大学経営大学院のスーザン・エイシー教授。AIがもたらす国家間の緊張や開発競争、そしてメリット・デメリットとどう向き合うべきかなどについて聞く。

スーザン・エイシー[Susan Carleton Athey]
米スタンフォード大学経営大学院教授
1970年生まれ。2007年、40歳以下の最も優れた米国経済学者に贈られるジョン・ベーツ・クラーク賞を女性で初めて受賞。6年間米マイクロソフトのチーフエコノミストを務めた。専門は産業組織論。

 アルゴリズム研究を通じて、AI(人工知能)が社会によりふさわしい結果を出すための研究に携わる、米スタンフォード大学経営大学院のスーザン・エイシー教授。最終回は、AIがもたらす国家間の緊張や競争、そしてAIがもたらす影響とどう向き合っていくべきかについて、エイシー教授に聞く。

 まずは、米中間で高まっているとされるAIの開発競争。研究の最前線にいるエイシー教授はどうみているか。

 「AIコミュニティーでは、規模の経済が働くことが極めて重要である。例えば(グーグルなどのような)巨大なテック企業が米国に次々現れる一方で、欧州からは出てこないことにも、ここに多くの理由がある。欧州市場は、投じる研究開発費用に見合う市場規模がないというのが、スタートアップが盛んにならない理由の1つである。米国市場は投資に見合う。十分に規模が大きい」

 つまり、AIに対する投資は、研究開発費用が膨大な場合もあるだけに、国の市場規模が成果に直結するということだ。言い換えれば、AIは大国に有利な、大国向けの技術。となれば、米国にとって中国は大きな脅威になる。

 「中国市場は米国市場よりさらに大きいし、技術面でも、教育向けの技術では米国の先を進んでいる。中国では、子供の教育に最先端の技術を使いたい人が多いからだ。そのため、中国にはいわゆる教育技術関連のAI開発に取り組む幅広いスタートアップが存在している。AIの学習のためには、ユーザー数が多ければ多いほど、それだけ違った組み合わせを使った実験が試せる。

 それは同時に、ユーザーがより多ければ、より早く進化するということにもなる。だから、中国が、技術の一部ではいったん米国に追いついたとしても、全く不思議ではない」

 さらに、中国では欧米社会ほどプライバシーが重んじられていないため、米国ほど気を使わないで実験を展開することが可能とされる。しかも中国人自身がまだ、一般的にはあまりプライバシー侵害を気にしないとされる。これもAI開発では大きな強みになる。ただエイシー教授自身は、AI開発を国家の覇権争いという視点では捉えていない。

日経ビジネス2019年9月9日号 80~81ページより目次