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AIのアルゴリズム開発に取り組む米スタンフォード大学経営大学院のスーザン・エイシー教授。AIを今後、生産性の向上や社会問題の解決に役立たせたいという。

スーザン・エイシー[Susan Carleton Athey]
米スタンフォード大学経営大学院教授
1970年生まれ。2007年、40歳以下の最も優れた米国経済学者に贈られるジョン・ベーツ・クラーク賞を女性で初めて受賞。6年間米マイクロソフトのチーフエコノミストを務めた。専門は産業組織論。

 米スタンフォード大学経営大学院のスーザン・エイシー教授は、自らが発表した「文脈付きバンディット」というアルゴリズムで、膨大な情報の中から、特定の個人に合った情報を選び出し提供する仕組みの開発に取り組んでいる。AI(人工知能)に関連するいくつかのプロジェクトに携わっているというエイシー教授。このアルゴリズムにより何が可能になるのだろうか、ビジネスにはどう応用できるのだろうか。引き続き、エイシー教授の話を聞こう。

 「最先端のアルゴリズムの理論面については、多くの研究が積み上がっている。シミュレーションも数多い。だが、実はまだあまり現実への応用例は多くない。多くの理由によって、アルゴリズムを実際に使うのが難しい。

 まず、AIに問題を解かせようとするなら、何をしたら成功かを示すよい指標が必要だ。例えば『特定個人に合った情報』といっても、何をもって『合っている』『合っていない』と判定するのか。AI研究者は、実験を繰り返し結果を検証し、果たしてよい判断だったのかどうかを見極めて次の実験に生かすことで、精度を高めていく。しかし、現実社会の大きな問題の多くでは、AIの判断が正しかったか否かを判断するのが難しい。正解があるにしても、すぐには解が見つからない」

AIが得意な分野はまだ限定

 確かに現時点でのAIの成功例は、成功・失敗の判定が分かりやすく、はっきりしている分野に集中している。例えば目立つのは、ビデオゲームや碁、チェスなどだ。