イノベーションを起こすには起業的発想を教える努力が必要と指摘する米マサチューセッツ工科大学(MIT)のマイケル・クスマノ教授。日本の学生はリスクを取らないが、背景には大企業の採用体制もあるとも指摘する。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院
「スローン・マネジメント・レビュー」主幹教授
「大企業の社員をイノベーティブに」と提案する米マサチューセッツ工科大学(MIT)のマイケル・クスマノ教授。起業的発想の育成が重要だと強調するが、ではそれはそもそもどのようなものか、またどうすれば育つのか。
「どうすれば新しいことをして世界に影響を与えられるか、いかなる新製品や新サービスをつくればいいか──。優れた起業家は常にこの視点で物事を考え続ける。これが起業的発想だ。
起業的発想を高めるには、製品やサービスといった形にする力と、それを市場に届けビジネスとして成立させる力の両方を磨くことが必要だと我々は教える。斬新なアイデアを形にするだけでなく、顧客から収益につながるお金を払ってもらえる価値を創造するところまでが起業だからだ。言い換えれば、起業的発想とは、アイデア、カタチ、収益といった『点』をいかにつなげるか考える作業とも言える」
起業は1人では成功しない

もちろん起業的発想は、事業創造の出発点にすぎない。アイデアを見いだし、その良さを周囲に伝えて巻き込み、形にするためのチームをつくる。その後、市場に投入するための収益モデルをつくっていく。起業家はこれをすべて管理しなければいけない。
「1人で会社を成功させられる起業家などいない。常に創造的なやり方で取り組み、周囲を巻き込むべきだ。同じやり方では、新しい価値を創るチームは生み出せず、消費者からお金を払ってもらえない。有効なチームを形作るには、リーダーシップの基本原理やチーム構築スキルが欠かせない。優れた起業家を育てるには、この部分を、まずは例題、演習などを繰り返して鍛える必要がある。
どんなに優れたアイデアのある起業家の卵でも、周囲に伝えず、自分の中に囲い込んでしまえば、話は進まない。大成功した米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏や米アップルのスティーブ・ジョブズ氏、米インテルのアンディ・グローブ氏のような起業家を見ると、アイデアを伝え仲間を説得する力にもたけていた」
ただ人を巻き込むだけでなく、巻き込んだ人を最適な部署に配置するチーム構築力も重要とクスマノ教授は話す。
「トップがすべての能力に秀で、下の者を束ねるようなチームは成功しない。その意味で、チーム作りが苦手だったのはスティーブ・ジョブズだ。
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