全2721文字

ビジネスのタネを見つけ、起業した後に課題となるのは規模拡大だ。多くの起業家はここで競合の増加や利用者の“裏切り”の憂き目に遭う。それを防ぐ上で必要なのは、拙速に陥らず「初めから高品質を実現すること」だ。

スコット・コミナーズ[Scott Duke Kominers]
米ハーバード経営大学院准教授
2009年、米ハーバード大学で数学を専攻、最優等で卒業。10年に同経済学修士、11年に経済学博士(Ph.D)。米シカゴ大学、ハーバード大学フェローなどを経て17年から現職。

 米ハーバード経営大学院の俊英、スコット・コミナーズ氏と共に、成熟時代の起業マネジメントについて考える本連載。1回目、2回目では、起業のタネを探すための基本的な考え方を解説してもらった。3回目は、そうやって見つけたタネをいかにして育てていくかについて考察する。

 「インターネットの登場で『地理的制約』が解消されるなど、過去10年、技術革新で様々な『市場の摩擦』を軽減する環境が整備された結果、多くの新ビジネスの土壌が生まれた。中でも事業機会の拡大に貢献を果たしたのは、監視技術だ。

 米大手配車サービス、ウーバー・テクノロジーズのようなライドシェアのビジネスが機能するのは、各ドライバーが運転するクルマを追跡する技術が完成し、ドライバーの腕前や誠意を数値化することが可能になったからだ。間違ったルートを進んだり、道を外れたりといった危険で未熟なドライバーは評判が下がり、いずれ排除される。このため、利用者は安心してサービスを活用できる。

技術が可能にした効率と公正

 同様に、民泊仲介世界最大手の米エアビーアンドビーは、部屋を投稿することも評価することもユーザーに任せることで、効率的でかつ公正な仲介をリアルタイムで実現している。こうした仕組みが可能なのも、スマホにアプリをインストールするだけで様々な投稿が可能になる技術が完成したからだ」

 ただ、こうした成熟市場向けの仲介ビジネスは、規模を拡大していく時にありがちな「ある壁」に直面する。

日経ビジネス2019年3月18日号 108~109ページより目次