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成熟市場でカネを生む「市場の失敗」。それを見極める第一歩となるのが、それぞれの市場で発生する「摩擦」だ。取引の障害になっている摩擦を軽減できれば、起業成功の確率は高まる。

スコット・コミナーズ[Scott Duke Kominers]
米ハーバード経営大学院准教授

2009年、米ハーバード大学で数学を専攻、最優等で卒業。10年に同経済学修士、11年に経済学博士(Ph.D)。米シカゴ大学、ハーバード大学フェローなどを経て17年から現職。

 前回は、起業の第一歩は「市場の失敗」を見つけ出すことだと解説した。本来成立することが望ましい取引が、適正でない価格設定や条件などのため成立しないことを米ハーバード経営大学院の俊英、スコット・コミナーズ氏は「市場の失敗」と説明する。今回は、この市場の失敗を見極める方法を紹介する。第一歩は、それぞれの市場で発生している「摩擦」を見つけることだ。

 「『摩擦』とは、市場での取引を妨げるもののことである。例えば、合意寸前だった取引候補者同士のやり取りが、通信状況が悪く頓挫してしまったとしよう。この場合の摩擦は、通信手段の不在である。ほかにも、言葉の壁のような単純なものから、特定の業界で続いてきた長年の商習慣まで、その種類は様々だ。適正な取引を困難にする政府の規制も含まれる」

 市場において最も古くからある摩擦は「地理的制約」だ。