商品はたくさん作りました。「台湾の味を手軽に」というコンセプトで、牛肉麺(柔らかく煮込んだ牛肉と香辛料が効いたスープが特徴の麺)や蚵仔麵線(カキの入った煮込みそうめん)など、伝統的な麺料理をカップ麺の形にしたほか、日本のみそラーメンや豚骨ラーメンも開発しました。

 麺を当時の台湾では珍しいノンフライにしたりするなど、品質にはかなりこだわりました。販売後の消費者の反応を見ても「おいしい」という声が多かったです。でも、売れませんでした。

 理由は価格です。販売を開始した90年代はじめ、即席麺の値段はだいたい15~30台湾ドルが中心でした。しかし私は、一番安い商品でも30台湾ドル、中には50台湾ドルで売り出した商品もありました。おいしければ高くても買ってくれると思ったのです。しかしウイスキーでは通用した「強気の価格設定」が、ここではうまくいきませんでした。

 確かに即席麺市場だけで見れば、「高級即席麺」として、独特のポジションを取ることができました。しかし、50台湾ドルあれば、外ではお弁当も買えますし、屋台では温かい料理が食べられます。外食市場をも含めて考えると他にも選択肢があるので、高級即席麺を買う理由がなかったのです。当時はまだ、「手軽に買えて簡単に作れる」ということに、最大のニーズがあり、いくらおいしくても手軽に買えなくなった瞬間、消費者には見向きもされませんでした。高級即席麺を買えるほどまだ十分な所得がなかったのです。

 私はそこまで気づいていませんでした。結局、即席麺事業は2000年代はじめに撤退することになりました。

 しかし、高級即席麺が売れる時代がいずれ来るという私の読みは間違ってなかったと、今では思います。スーパーやコンビニエンスストアなどに行っても、最近は40~50台湾ドルの即席麺がずいぶん増えました。日清食品など外資メーカーの即席麺も価格は高いですが人気です。外で食事をとる時間がなくともすぐにおいしいものが食べたいというニーズが確実に生まれています。もう一度即席麺を売るつもりはないですが、今だったら成功したんじゃないでしょうか(笑)。

16年に、成長が頭打ちのビール事業にあえて参入することを決めたのはなぜですか。

 ウイスキー事業を始めて約10年たった2016年、将来を見据えてもう一つ新しい事業を立ち上げたいと考えました。有力候補となったのが、酒類事業に参入する際、検討したビール事業です。

 16年に本格的に参入を検討し、早速市場調査を始めました。

 ビールは今でも台湾の酒類販売量の約8割を占める、最もよく飲まれているお酒です。市場のシェアは、02年まで専売制が長く続いた関係で「台湾ビール」の製造販売を手がける台湾菸酒公司(旧公売局)が約6割と今でも大きな存在感を示しています。

世界のビールがシェアを取り合う
●台湾のビールシェア(2018年数量ベース)
世界のビールがシェアを取り合う<br /><span>●台湾のビールシェア(2018年数量ベース)</span>
出所:英調査会社ユーロモニター

 残りを占めるのが輸入ビールです。05年に関税が撤廃されたこともあり、多くの国のビールが台湾市場に参入し、シェア争いを繰り広げています。存在感があるのがオランダの「ハイネケン」や、中国の「青島ビール」です。日本のキリンビールやアサヒビールの商品もよく飲まれています。最近では海外のクラフトビールも増えてきました。