全5260文字

世界で認められた「ジャパニーズウイスキー」の背中を、「台湾ウイスキー」が追っている。亜熱帯というウイスキー作りに不利な条件を逆手に取るイノベーションで、世界を驚かせた。革新の旗手が、謙虚さと待てない性格が同居する、金車グループの李玉鼎総経理だ。

=本文敬称略

(写真=賴 光煜)
李玉鼎[アルバート・リー]
1965年 台湾新北市で生まれる。父は金車グループ創業者の李添財
79年 父、添財が金車グループを設立。飲料事業を始める
81年 5年制専科学校(日本の高等専門学校に相当)に入学
82年 父、添財が台湾初の缶コーヒー「伯朗珈琲」発売開始
85年 5年制専科学校を卒業。兵役に就く
89年 父や周囲の勧めで日本留学を決意し日本へ。東京・中野に住む
92年3月 明治大学商学部産業経営学科を卒業
92年 帰国し金車に入社。父親の補佐役となる
96年 金車が宜蘭県に工場を構える。ミネラルウオーターの製造開始
2005年4月 ウイスキー事業参入に向け、蒸留所の建物を着工
06年 ウイスキーの蒸留を始める
08年 ウイスキー「カバラン・クラシック」をリリース
10年 カバランが著名評論家が集まった品評会で最高の評価を受ける

 ここ数年、手軽に行ける海外旅行先として注目を集めている台湾。首都台北のみならず、郊外に足を延ばすリピーターも増えている。

 そんな旅行者がこぞって行く場所の一つが、3800mを超える主峰を持つ2つの山脈に挟まれた、台湾北東部の宜蘭(ぎらん)だ。かつては秘境のような場所だったが、2006年に片方の山脈を貫通する「雪山トンネル」ができて以降、台北から車で1時間ほどで行ける観光地となった。

 この宜蘭の名を世界に知らしめた人物が、李玉鼎(アルバート・リー、54)である。10年、李が宜蘭で作ったウイスキーが世界の愛好家を驚かせた。南国の甘いフルーツのような香りと深いコクを兼ね備えたウイスキーが、著名評論家が集まった品評会で、スコットランドをはじめとするウイスキーの聖地のブランドを抑えて1位となったからだ。

日経ビジネス2019年8月19日号 54~57ページより目次