「日本は頭を使わずとも暮らせる国か。過保護な社会がもたらす弊害」

 「この国にいると、何も考えなくても生きていけるわね。バカになりそうだわ」。以前、英国人の友人が日本に遊びにきた際に言った皮肉が忘れられない。日本では、どこの施設に行っても大抵のサービスが行き届いている。治安は良く、かばんを置いておいても取られることは少ない。居心地は良いが、これ以上日本にいると自分の頭を使わなくなる。友人はそう言って帰国したのだ。

 確かに、そうだ。これほど周りを警戒せずに暮らせる国は世界でもまれだ。国や自治体のサービスが充実し、交通などのインフラも充実している。デパートや商業施設に出かけると、お客として丁寧に対応してくれる。移民を受け入れる欧州では、日本のように他者を信用することはあり得ない。ブラジルだと荷物から手を放して置いた途端に捨てたと認識される。友人には、日本が居心地が良い国というより、何も考えずに暮らせる国だと映ったようだ。

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