「大きすぎる格差は経済成長を妨げる。弱者への支援が社会全体を強くする」

 これまで必ずしも十分に社会参加できる環境になかった境遇の人たちが、積極的に社会とかかわり、貢献できる、全員参加型の「共生社会」の実現が叫ばれている。社会的に弱い立場になりやすい人たちへの配慮はもちろんのこと、仕事や家庭で問題を抱え、精神的、経済的に困難な状況にある人が孤立せずに、その人らしい生活を送れる社会基盤の構築が求められている。

 なぜ今、共生社会が重視されるのか。それは、社会におけるゲームのルールが変わったからだ。経済成長著しい頃の日本は「強い人」「頑張った人」が生き残るルールだった。新自由主義的な価値観がもてはやされ、勝ち組が社会のけん引役となるのがよしとされた。しかし経済が成熟すると同時に、環境や資源の制約が強まる今後は、「みんなで生き残る」ことを目指すゲームになっていくのではないだろうか。

 自分がこのことを痛切に感じたきっかけが、2014年にオーストラリアで開催された第5回G20労働雇用大臣会合への出席だ。会合では「構造的失業の防止」「より良い雇用の創出」などをテーマに活発な議論が行われたが、そこで初めて使われたのが「包括的成長」という言葉だった。

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