「保守傾向強い『粘土層』、中間層の意識を変えるのがガバナンス革新の鍵だ」

 金融庁と東京証券取引所は6月にコーポレートガバナンス・コードの3回目の改訂版を出す。同コードは、持続的な成長のために企業の収益力を強化し、それを賃金や投資リターンの向上に結び付け、経済全体の成長を高める好循環を目指して2015年に適用が始まった。6年が経過し、ガバナンス(企業統治)改革の成果はあったのか。

 変化は起きている。ROE(自己資本利益率)など収益力は上向いている。海外投資家から指弾されていた株式の持ち合いも減った。顧問や相談役制度も見直しが広がった。社外取締役の数は増え、指名報酬委員会によってトップ人事の透明化も前進しつつある。他方、同コードが規制色を強めている印象も持つ。「順守せよ、さもなくば説明せよ」というコンプライ・オア・エクスプレインの概念は日本では新しい、画一化を避ける工夫のはずだが、順守率が公表され圧力がかかる。

 取締役会構成のダイバーシティ(多様性)拡大や気候変動・人権問題への対応など、さらなる課題も生まれている。ここで立ち止まって考えたい。今後もこれまでと同様の改革を一歩一歩進めていくことで経済は良くなっていくのだろうか。この間、時価総額でグローバルな地位を占める日本企業の数は増えていない。技術革新による生産性を示す全要素生産性(TFP)の伸びも低下傾向だ。実質賃金が国際比較でも伸び悩む一方で、企業が資金を抱え込む状況に変化はない。漸進主義的な発想では日本の企業部門が活性化するのは難しいと考える方が現実的だ。

 問題の根底には、多くの日本企業が、終身雇用のメンバーをコアモデルにしたまま、という事実がある。何年入社で会社のどの部署で仕事をしたか、という評価が積み重なって長い年月をかけて昇進し、何年働いたかが報酬の大部分を決定する。こうした人々で会社の大半が出来上がっている。

 このような組織では取れるリスクの大きさとスピード感に限界がある。グローバルな市場を相手にしたり、デジタル技術を大胆に取り入れたりしなければ大きな成長を望めないのが今の時代。企業として大きなリスクを取れなければ、大きな成長は難しい。