「日本経済の復活は、企業の賃金引き上げと、低賃金戦略の大転換から」

 米工業史で有名な逸話がある。自動車会社を経営するヘンリー・フォードが1914年、自社工場の従業員がフォードの車を買えるよう、賃金を当時の平均の倍に上げたエピソードだ。これはやや正確性に欠けるようだ。フォードは確かに賃金を上げたが、それは離職率を下げるためだった。ただし、このエピソードは核心をついている。国中の経営者が低賃金で人を雇用したら、自分たちの製品やサービスへの国内需要全体までが下がるということだ。

 バブル崩壊から現在まで、30年間の日本がこれだ。賃金の伸びを上回るペースで生産性を上げて繁栄した日本は、世界の中でも高賃金で人件費の高い国だと考えられていた。だが今は、人件費の安い国となった。各国のデータを比べると、2000年以降の日本の単位労働コストの推移が、他の先進国と大きく異なる。

 厚生労働省によると、19年末の日本の単位労働コストは21世紀初頭より3%低下した。1990年代の数字と比べても低下している。一方、欧州連合(EU)統計局によると、ドイツの2019年末の単位労働コストは00年より40%増加した。英国は20年で2倍、米国もほぼ2倍だ。

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