「強者は弱者に寄り添え。 個人も国家も社会から 孤立させてはならない」

 大変痛ましい事件が起きてしまった。元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76)が自宅で長男の英一郎さん(44)を刺殺した事件だ。熊沢容疑者は、ひきこもりがちで激しい家庭内暴力を振るっていた英一郎さんを包丁で刺して殺害、自ら110番したとされる。

 報道によれば、5月下旬に川崎市多摩区で児童ら20人が殺傷された事件が起きた後、英一郎さんは近隣小学校の運動会の音に腹を立て「うるせえな、ぶっ殺すぞ」と騒いだようだ。熊沢容疑者は「息子も周りに危害を加えるかもしれないと思った。刺さなければ私が殺されていた」と供述したという。

 元エリート官僚が息子を殺した、という点で社会的に注目を浴びたが、私はこの事件を熊沢容疑者個人の問題として片づけてはならないと感じている。殺害事件の背景に、いじめの問題がありそうだからだ。報道によれば、英一郎さんは中学・高校時代に言葉や暴力による激しいいじめを受けたようだ。それが一因となり、徐々にひきこもり、追い込まれて家庭で暴力を振るうようになったという見方も出ている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り967文字 / 全文1455文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「賢人の警鐘」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。