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新型コロナウイルスの感染拡大は、誰を優先して救うかという重い課題を突きつけた。医療機器資源の限界からだ。日本は議論を深める時期に来ている。

児玉 聡[こだま・さとし]
京都大学大学院准教授
京都大学大学院文学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て2003年に東京大学大学院医学系研究科・医療倫理学講座助手。同専任講師を経て12年10月から現職。近著に『実践・倫理学』(勁草書房)。

 日本で政府が新型コロナウイルスの感染拡大に対する緊急事態宣言を5月14日、39県で解除し、欧米でも一部の都市で限定的に都市封鎖(ロックダウン)が解かれるなど、次第に経済活動の再開が始まろうとしている。しかし、感染拡大の完全収束が見通せているわけではなく、人命が失われるリスクはなお消え去ってはいない。

「高齢者ICUお断り」のイタリア

 この問題は、医療機器などの資源に限りがある今、人命の中でも誰を優先して救うのかという重い課題にも行き着く。コロナ禍を収束できたとしても、遠くない将来、再び感染症のパンデミック(世界的流行)は起こり得る。我々は、この難題を検討すべき時期に来ているのではないだろうか。

 私の専門の生命倫理学は、先端的な医療や医学が個人と社会にもたらす問題を考える学問である。例えば、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って精子や卵子を作り、それを受精させてもよいかといったことや臓器移植の倫理性などを考える。その視点から検討してみたい。

世界では30万人余りが亡くなった
●新型コロナウイルスの感染による世界の死者数
出所:米ジョンズ・ホプキンス大学の資料を基に本誌作成(5月15日時点)(写真=アフロ)