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スタートアップ支援は重要だが、日本の政策は方向が間違っている。開業率でなく、質を見極めた支援に切り替えるべきだ。

沈政郁[しむ・じょんうっ]
京都産業大学経済学部教授
1971年生まれ。韓国・成均館大学卒業後、一橋大学大学院で博士号取得。専門は同族経営で、婿養子研究で知られる。戦後創業の企業分析を通じて起業にも詳しい。
(写真=PIXTA)

 世界で日本企業の存在感が薄くなったと言われる場面が増えている。そのことを端的に捉えているのが、企業の世界時価総額ランキングだろう。2018年で50位以内に入っている日本企業はトヨタ自動車だけ。1989年に日本の企業が32社も入っていたことを思えば、隔世の感を禁じ得ない。

 一方、上位10位以内に入るのは,米GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や中国のアリババ、テンセントといったプラットフォーマー企業で、業歴が比較的短いのが特徴だ。日本経済が低迷した30年で世界は様変わりし、若く有望な企業が台頭し、世界経済をけん引している。

 もちろん、日本はこうした状況にただ手をこまぬいていたわけではない。世界水準で勝負できる企業を生み育てようと、スタートアップ活性化に積極的に取り組んできた。成長戦略で、起業の動向を測るKPI(重要業績評価指標)として開業率を位置付け、19年策定の成長戦略では「米国・英国レベル(10%台)」の目標を掲げた。施策としてスタートアップに対する資金調達の支援、相談体制の拡充などを進めている。