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多様な輸送・移動手段を統合する「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の時代が近づいている。日本各地で実証実験が始まり、世界では一部で導入の段階にある。どういった収益モデルが可能なのか。

早瀬 慶[はやせ・けい]
PwCコンサルティング
パートナー/商用車・モビリティリーダー

一橋大学卒。スタートアップ、外資系コンサルティング会社を経て、2018年PwCコンサルティング入社。自動車業界を中心に、20年以上、経営戦略策定、M&Aなどに従事。

 ここにきて日本でもMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を目指す動きが活発になってきた。情報が可視化されて世界の動きが見えるようになり、若い世代が意識を底上げし、一歩先の対策の必要性を感じ始めたからだろう。

 まず、MaaSという言葉の概念から整理しよう。日本を含む先進国の都市部では、渋滞や交通事故、環境問題が顕在化している。一方で、地方都市や郊外は過疎化で交通利便性の確保が課題だ。これら移動に絡む社会問題を解決するのがMaaSだ。「モビリティ」は自動車業界に限った用語ではない。

 MaaSでは便益が必ずしもお金に換算される必要はない。地域にとっての「ウィン」や「ハッピー」はそれぞれだからだ。ただ、システムの継続性を考えれば、お金をどう回していくかは極めて重要である。

地域の特徴によって望まれる形は様々
●日本型MaaSの形態
出所:PwCコンサルティング(写真=3点:アフロ)

日本は社会課題を「我慢」

 日本の取り組みが遅れているのは確かだ。社会課題の解決を是とする欧米と異なり、日本人は不便でも我慢しようとするからかもしれない。赤字状態が続いても住民が声を上げようとしない。バスなどの公共交通はその典型だ。

 また、日本は業界や地域といった垣根を越える問題に手を組んで対応することに慣れていない。一般的に、産官学の人材の流動性にも乏しい。MaaSのような総合的な社会課題への対応では、ライバルも含めた関係者との連携が欠かせない。

 関係づくりが苦手な業界の代表格が自動車産業だ。今後、車の台数は間違いなく減る。乗用利用が減少し、現在は乗用利用と商用利用の比率が3対1程度だが、2030年には1対1になろう。環境対応などで開発コストが増加し、自動車メーカーの経営環境はさらに厳しくなってくる。

 海外ではメーカーからの脱皮を目指す動きもあるが、日本勢の取り組みは物足りない。あと5年は大丈夫、といった考えだと取り残される。まずは自らの強みと市場を見極め、何に注力していくかを決めなければならない。

日経ビジネス2019年10月14日号 88~89ページより目次