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国内の「飛び地」よりも、海外同業種のM&A(合併・買収)の方が成功する可能性が高いことが分かった。成否のかぎはその「結婚」の仕方にもある。様子見から始めず、一気に親会社になった方がよさそうだ。

田中 大貴[たなか・だいき]
ベイカレント・コンサルティング
マネージングディレクター

早稲田大学卒。シンガポール・南洋理工大学EMBA在学中。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ジェネックスパートナーズなどを経て現職。著書に『ポストM&A成功44の鉄則』。

 企業が経営戦略を進める上で、M&A(合併・買収)が一般的になってきた。事業を短期間で成長させるだけでなく、不足のリソースを補う方法として有効な手段だからだ。

 中でも増えているのが、国内企業による、海外企業のM&Aである。2007年には367件だったが、17年には672件にまで増えた。例えば武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収や、ソフトバンクによる英ARMの買収などが、記憶に新しいところだろう。

大規模な買収が相次ぐ
●国内企業による海外企業の大型買収の例

 それでは、海外企業のM&Aがすべてバラ色かといえば、もちろんそうではない。海外M&Aは比較的買収額が高額で、数千億円から1兆円規模になるケースも少なくない。

海外企業の買収は巨額に
●国内企業によるM&Aの1件あたりの平均買収額
出所:レコフの2018年調査より。M&Aの合計金額を件数で割って算出

 大型M&Aの懸念の一つがのれんだ。のれんとは、買収価格と対象会社の帳簿上の純資産額との差額のこと。

 当初の狙いよりも収益を創出できず、投資回収ができないと判断された場合に、のれんは減損処理される。この減損のインパクトは大きく、のれんが過去の事象といえども、投資家やアナリストがネガティブに捉えれば株価の急落を招く。

 このようなのれんの減損を回避したり抑止したりできないか、筆者らは早稲田大学大学院経営管理研究科の山田英夫教授と研究を重ねてきた。今回はその一部を紹介する。

活路は海外同業M&Aか

 そもそも海外M&Aを実施すると、どの程度の確率で減損が生じるのか。仮に国内M&Aの方が減損を起こしにくいとすれば、わざわざリスクを取って海外M&Aに挑戦する理由は薄れる。また、買収した企業が同業種(商材と顧客が同じ)か、異業種(商材か顧客が異なる)かによっても減損の頻度は左右されるだろう。

 そこでIFRS(国際会計基準)を採用する国内企業を対象に、1996年1月から2018年3月までのM&Aを1917件調査した。M&Aの種類を「国内・同業種」「国内・異業種」「海外・同業種」「海外・異業種」の4つに分類し、それぞれ減損の発生頻度を算出した。

日経ビジネス2019年5月27日号 80~81ページより目次