車の走行性能への評価が高く、国内外に熱烈なファンがいるSUBARU(スバル)。そんなエンジンの“申し子”が、2500億円もの電気自動車(EV)関連投資を決めた。EV大競争にどんな戦略で挑むのか、トップに直撃した。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

中村知美[なかむら・ともみ] 氏
1959年東京都生まれ。82年慶応義塾大学法学部卒業、富士重工業(現SUBARU)入社。主に国内販売部門を担当し、2011年執行役員 戦略本部長兼経営企画部長、13年スバルグローバルマーケティング本部副本部長、14年常務執行役員 スバル海外第一営業本部長兼米国事業会社スバル・オブ・アメリカ会長、16年専務執行役員、18年から現職。一連の完成車不正検査問題に対処した。最重要市場である北米の販売事情に明るい。本インタビュー後の3月3日、SUBARUは中村氏が6月に会長に就任すると発表した。
自動車業界は電動化などで激動期を迎えています。その中で「SUBARU(スバル)らしさ」をどう発揮しますか。
スバルと言えば「走り屋」。低重心で振動の少ない「水平対向エンジン」、独自の四輪駆動システム(AWD)といった、ややキワモノのイメージがありますよね。これらは車の機能を向上させる手段であって、根底で脈々と受け継いでいるのは、乗り物は安全であるべきだとの考えです。「走る」「曲がる」「止まる」という基本性能を追求し続けてきました。
それを踏まえ、社内では「不易(時代を通じて変わらないこと)」と「流行」の言葉を大切にしています。不易は今申し上げたことです。そして流行は、その時代の影響を受けるもの。例えば車の外観や自動運転技術「アイサイト」などを含みます。その中で、私は主に不易の部分を強くするために活動してきました。
車の基本性能の高さが強みなのですね。他社とはどう違うのですか。
走る楽しさを感じたり、乗っていて安心感があったりすることです。ある程度の速度が出ていても、曲がろうと思った方向にしっかりと車がついてくる。基本性能を向上させるための技術開発にはお金をかけていますし、そこは絶対外せません。
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